展示会でもイベントでも、私たちはつい「新しい広告面」を作ろうとする。新しいパネル、新しいブース、新しい映像。だがカナダのある観光局は、広告を一枚も貼らずに大きな成果を出した。客がもう集まっている場所を、丸ごと自社の世界で”包んだ”のだ。現場を持つ中小企業にこそ効く「型」を分解する。
何が起きたのか
2026年6月11日〜7月19日、カナダ・ブリティッシュコロンビア州の観光局(Destination BC)は、代理店Zulu Alpha Kilo(バンクーバー・トロント・NYの3拠点協働)と組み、FIFAファンフェスティバル・バンクーバーで「Home Pitch」という体験を展開した。
ごく普通のサッカーピッチを、約12,000平方フィート(約1,100㎡)の360度LEDスクリーンと空間音響で囲んだのだ。ファンがボールを蹴り合う背後には、州内の名所やルートの映像が次々と変わって映る。スポーツと物語と土地が一体になった、”中に入って遊べる環境”だ。ワールドカップで沸くファンの熱量を、開催都市バンクーバーだけで終わらせず、州全体の観光周遊に接続する狙いだった。7月5日時点で約4万人が来場(開幕週末だけで1万人超)している。
なぜ効いたのか
からくりは一点にある。観光地の映像を「見せる」広告を新しく作るのでなく、客が既にやりたがっている行為(ボールを蹴る)の周囲360度を、自社の世界観で包んだことだ。
受け身で映像を見せられるのと、プレーしながら絶景に没入するのとでは、記憶への残り方がまるで違う。人は「見せられた広告」は疑うが、「体験している最中の景色」は疑わない。しかも舞台にしたのは、ファンが自発的に集まって熱中している場だ。だから新しい集客をせずとも、大量の接触が自然に生まれた。広告面を増やすのでなく、既にある”人の集まり”を作品に変えた——ここに構造の妙がある。
中小企業なら、こう使える
「うちに360度スクリーンの予算はない」——そのとおり。だが構造だけ抜けば、規模は問わない。新しい接点を作る前に、客が既に足を止めている場所の”周囲”を、自社の世界で包めないかを考える。
たとえば展示会。新しいブースパネルを刷る前に、来場者がもう足を止める場所——実演スペース、重機やサンプルの前——の周囲を、自社の施工実績映像や世界観で囲む。”見せる”のでなく、”体験の最中に立たせる”。たとえば店舗や現場見学。客が必ず通る動線そのものを、説明パネルでなく体験の連続に設計し直す。うち(ゲンバスター)が提案する実演型の営業とも、地続きの発想だ。
共通するのは、広告面を新設せず、客が既にいる場そのものを広告体験に変えること。場所は借り物でいい。勝負は「包み方」だけだ。
まとめ
Home Pitchがやったのは、広告を貼る代わりに、客が既に集まる場を自社の世界で包んだことだった。新しい接点を増やすより、既にある熱量に自社を溶かすほうが強い。この型は、現場や店舗という「人が集まる場」を持つ中小企業ほど再現しやすい。
ASTERでは、こうした話題の広告を100本以上「なぜ効いたか」の構造まで分解し、御社の業種に翻訳する仕事をしています。御社が既に持っている”人の集まる場”を、どう体験に変えるか。一度一緒に棚卸ししてみませんか。
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