顧客が買わない理由は、性能でも価格でもないことが多い。「なんとなく気が引ける」という、口に出せない後ろめたさだ。ニュージーランドの水産ブランドSealordは、その言えない感情に名前を付けることで、障壁ごと自分のものにした。
何が起きたのか
2026年、NZの水産ブランドSealordが、代理店Motion Sicknessと組んで「We Love Fish」を公開した。
「魚は職場で食べると臭い」「調理が面倒」「冷凍魚を使うのはズルい気がする」——魚を食べることへの、こうした後ろめたさを”fishame(fish+shame=魚の恥)”と名付けた。ベテラン漁師が街に出て、”fishame”に囚われた人々を狩っていく。バスで魚の缶詰をこっそりしまう男、職場で魚をチンして空調に隠れる女性。漁師は説く——「魚を、高く掲げて誇れ」と。
なぜ効いたのか
「魚は面倒で恥ずかしい」という感情は、多くの人が抱えているのに、誰も口に出さない。この言語化されない後ろめたさが、静かに購入を妨げていた。
Sealordは、その感情にあえて名前を付けて可視化した。名前が付くと、「自分だけじゃなかった」と当事者が笑いながら認められる。隠していた感情が、共有できる”あるある”に変わる。そして、問題を先に名付けて「所有」してから、解決者として立つ。この順番が効く。いきなり「魚を食べよう」と説教されたら反発するが、「その後ろめたさ、fishameっていうんですよ」と名付けてくれたブランドは、その障壁を解いてくれる唯一の味方に見える。
中小企業なら、こう使える
顧客が口に出せずにいる後ろめたさ、ためらい、言い訳。それにあえて名前を付けて可視化する。肝は、問題を先に名付けて所有してから、解決者として立つことだ。説教から入らない。「それ、あるあるですよね」と名付けて共感を作ってから、味方として解決策を出す。
▷ うちなら
中小企業向けのブランドストーリーで使える。たとえば「うちみたいな小さな会社が、広告なんて出していいのか」という経営者の遠慮。この言えない後ろめたさに名前を付けて可視化し、「その遠慮、○○っていうんです」と共感を作る。そのうえで、ASTERがその障壁を解く味方として立つ。採用でも、応募をためらう求職者の「未経験なのに応募していいのか」という後ろめたさに名前を付ければ、応募の心理的ハードルが下がる。名付けた者が、その問題の主になる。
まとめ
Sealordがやったのは、言えない後ろめたさに名前を付けて、障壁ごと所有したことだった。問題を先に名付ければ、説教にならず、ブランドはその障壁を解く味方になれる。
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