Home Business Works Company Member Contact Recruit Journal
← ジャーナル一覧
Industry News 3 min read

値札の”ゼロ”は、削るより足すほうが売れる。IKEAが仕掛けた「瞬間あたりの価格」

「安いですよ」——値下げ合戦のさなか、どの店も値札からゼロを削ろうと必死だ。そんな中でIKEA(ベルギー)は、逆に値札へゼロを”足した”。商品ではなく、その商品が生む「一瞬の幸福」に値段をつけたのだ。価格でも機能でも殴り合わない、この静かな一手には、体力勝負では大手に勝てない中小企業にこそ効く「型」がある。順番に分解していく。

何が起きたのか

2026年8月、IKEAベルギーはOgilvy Social Lab Brusselsと組み、屋外・印刷広告で「商品ではなく、その商品が可能にする瞬間に値付けする」キャンペーンを展開した。

各広告は、実在の商品と通常価格に加えて、桁外れに細かい”もうひとつの価格”を併記する。ソファには「歓喜のジャンプ1回あたり €0,00000063」。犬用おもちゃには「しっぽの振り1回 €0,0000024」。ベッドサイドのランプには「寝かしつけの物語1話 €0,000000018」。椅子には「(子どもが見つける)蝶1匹 €0,00000000076」。

小売各社が価格競争で値札の数字を削るなか、IKEAだけが逆方向に、ゼロを足していった。クリエイティブディレクターはこう言い添えている。「価格競争では普通ゼロを取り除く。我々は足した。クリエイターに値付けを任せると、こうなる」。The DrumやFamous Campaignsなど業界メディアが取り上げた。

なぜ効いたのか

からくりは一点にある。「安さ」で戦う土俵からそっと降り、商品が生む”感情的な成果”を分母にして「1回あたりの価値」に割り直したことだ。

同じ「安い」を伝えるにも、「9,900円」と言えば競合との数字比べに巻き込まれる。だが「歓喜のジャンプ1回あたり0.0000006円」と言われた瞬間、人は価格ではなく”その商品と過ごす日々”を想像し始める。しかも、ありえないほど0が並ぶ桁数そのものがツッコミどころになり、「どういう計算だ」と二度見させる。笑いと納得が同時に走る。業界の誰もがやる操作(値下げ・ゼロ削り)を、あえて逆手(ゼロ足し)に取ったことで、その一手自体が話題装置になった。

中小企業なら、こう使える

「うちは値段でしか比べてもらえない」——その悩みごと、価格の土俵から降りればいい。自社の商品・サービスを、金額そのものでなく「顧客が得る成果1回あたり」に割り直して見せる。

たとえば私たちのテレアポ代行なら、「月額◯万円」ではなく「商談アポ1件あたり◯円」。採用支援なら「1名の採用にかかった費用は、入社後に働いてくれる日数で割ると1日あたり◯円」。清掃や保守なら「トラブル1件を未然に防ぐコストは、稼働1時間あたり◯円」。分母を”金額”から”顧客のうれしい瞬間・防げた損失”に変えるだけで、高いか安いかの勝負が、値打ちがあるかないかの勝負に変わる。

ポイントは、正確な原価計算より「割り算の見せ方」だ。顧客が本当に買っているのは商品ではなく、その先の成果だと思い出させる。値下げして消耗するより、同じ数字を”割って”みせるほうが、はるかに安く効く。

まとめ

IKEAがやったのは、「安い」という当たり前の主張を、値札のゼロを削るのではなく足すことで語り直したことだった。価格競争から降り、商品が生む瞬間に値付けし直す。この型は、体力で大手と殴り合えない中小企業ほど再現しやすい。

ASTERでは、こうした話題の広告を100本以上「なぜ効いたか」の構造まで分解し、御社の業種・価格表に翻訳する仕事をしています。自社の見積りや料金表を、どう”1回あたりの価値”に組み替えるか。一度一緒に棚卸ししてみませんか。

(構造の解説資料・過去事例集をご用意しています。お気軽にお問い合わせください。)

𝕏 f in 🔗