「うちは中身が同じで安い」。この主張は、どのブランドも言う。だから信用されない。The Ordinaryは、言う代わりに、バナナを175ドルで陳列した。
何が起きたのか
2026年5月、スキンケアブランドのThe Ordinaryが、偽の高級スーパー「The Markup Marché」をトロントで開店した。その後、ロンドン・パリ・メルボルン・サンパウロ・メキシコシティへ巡回している。
棚に並ぶのは、ごく普通の食材だ。ただし、名前と値札が違う。
バナナは「オールナチュラル・マジカル・エナジーブースティング・バー」として175.90ドル。アボカドは「100%ナチュラル・グロウエンハンシング・バイタリティ・オーブ」として305.90ドル。ココナッツは「エキゾチック・サースト・ディファイング・ハイドレーション・ベッセル」として195.50ドル。
商品は実際には販売しない。レジで来場者が受け取るのは、The Ordinaryの実際のスキンケアだ。
狙いは明快で、美容業界が単純な成分を大げさな言葉と高級パッケージで何倍にも値付けする慣習を風刺すること。
なぜ効いたのか
The Ordinaryは、自社が批判したい業界の論法を、まったく別のジャンルにそのまま適用した。誰もが値段を知っているスーパーの野菜と果物に。
バナナが175ドルになる過程を実物で見せる。それだけで、「言葉と包装で価格は作れる」という主張が、説明ゼロで証明される。
受け手が原価を知っている素材を使ったことが決定的だった。バナナやアボカドなら、誇張の度合いが即座に体感できる。化粧品の価格が妥当かどうかは判断できなくても、バナナが175ドルなのはおかしいと誰でもわかる。
化粧品売場の批判を“スーパー”に置き換えたことで、業界批判が、業界の外の人にも通じる笑い話になった。
コスト面も優秀だ。値札とコピーだけで成立するから、6都市に巡回できる。そしてレジで本物の自社商品を渡すことで、風刺が販売導線として閉じている。
中小企業なら、こう使える
自社が批判したい業界の論法(誇張・値付け・専門用語)を、顧客が相場を熟知している別ジャンルの商品にそっくり移植し、パロディの売場・値札として物理化する。
原価を知っているものに適用されると、誇張の異常さが説明なしで伝わる。そして批判が、業界外の人にも通じる笑い話になる。
▷ うちなら
これは、いちばん低コストで転用できる構造だ。売場を作らなくても、資料1枚でできる。
たとえばウェブ制作の相見積もりを「ラーメン屋のメニュー」に翻訳した比較表を作る。「特製スープ調整費 8万円」「麺の本数最適化 12万円」。同じ論法をラーメンに適用すると、顧客は一瞬で理解する。
リフォーム、保険、通信。専門用語で価格が膨らむ業界なら、どこでも使える。自社の見積書がいかに正直かを説明するより、他業界に翻訳した1枚の方が速い。
まとめ
The Ordinaryが証明したのは、業界の誇張を批判する最短ルートは、その論法を別業界に移植することだという点だ。相場を知っているものに適用された瞬間、誇張は説明不要で異常に見える。
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