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投げ出した跡で語る——easyJetが看板にした「未完成」という広告

完成した美しい広告の、逆をいく手がある。あえて未完成のまま、途中で投げ出した跡だけを見せる——その”不在”に、見た人が勝手に物語を入れてくれる。2026年、easyJetが「未完成の看板」でそれを証明した。

格安航空のeasyJetは2026年6月、「Drop Everything(何もかも放り出せ)」というキャンペーンを展開した。48時間以内に出発する便を一覧できる新ツールを軸に、ロンドンには広告というより”事件現場”のような特殊看板を設置。道具は散らばり、足場は組まれたまま、作業員だけが消えている。通りかかった職人がこの広告に衝動をかき立てられ、仕事を放り出して空港へ走った——という設定だ。コピーは「Routine. Schmoutine. Drop Everything.(ルーティン?知るか。全部放り出せ)」。

なぜ効いたか

「今すぐ飛べます」と言葉で書けば、ただの機能説明で流される。だがeasyJetは、その言葉が実現した瞬間——人が衝動に負けて現場を放棄した痕跡——だけを置いた。人は説明されると疑うが、痕跡を見せられると想像で補う。「どんな衝動なら、道具を置いて走り出すのか」を、見る側が勝手に物語る。しかも街に紛れ込んだ”放棄された工事現場”という異物感が、二度見と撮影を誘った。広告を見せられたのではなく、事件を目撃した感覚になる。

中小企業ならこう使う

伝えたい変化を、「その変化が起きた直後の痕跡」に置き換えてみる。採用なら「働きやすい職場です」と書く代わりに、「前の会社の求人票を破って面接に来た机」を見せる。乗り換え提案なら「他社より速い」と数字で言う代わりに、「途中で止まった見積書を蹴って乗り換えた現場」を見せる。完成した理想像より、投げ出した跡のほうが雄弁だ。とくに現場が絵になる建設・製造業では、この逆張りがそのまま効く。

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