「英国では年間4.4億着の白い服が捨てられている」——そう文字で読んでも、ほとんどの人の心は動かない。シミ取り剤のDr. Beckmannは、その数字を、人が横に立てる高さ5mの”実物の山”に積み上げて見せた。統計を、量塊に変えたのだ。抽象的な数字を実感に変えるこの一手には、目に見えない損失を扱うすべての会社に効く「型」がある。順番に分解していく。
何が起きたのか
2026年のウィンブルドン期、Dr. Beckmannはロンドンのサウスバンクに、廃棄予定だった白い衣類数千点を積み上げた、高さ5m・幅8mの巨大な山を出現させた。テニスの「全身白」のドレスコードにちなんだ白服の山だ。
しかもこの山を、ウィンブルドンの観客席の愛称「Murray Mound(マレー・マウンド)」の形と名前に重ねた。前に立ったのは、アンディ・マレーの母でありテニス界の名物人物、Judy Murray。彼女が「英国では年間4.4億着の白服が廃棄され、毎日このMurray Mound大の山が埋め立てに送られている」と語った。汚れや黄ばみを落とせばまだ着られる——そう示すことで、自社のシミ取り剤を「廃棄を減らす救済策」として位置づけた。MSN、Yahoo、PRmomentなどが報じた。
なぜ効いたのか
からくりは一点にある。「毎日これだけ無駄になっている」という目に見えない統計を、人が横に立てる実物大の”量塊”に物理化したことだ。
「年間4.4億着」は、大きすぎて誰も想像できない。だが、5mの服の山が目の前にあれば、「これは多すぎる」と一目で伝わる。数字は疑えるが、量塊は疑えない。さらにこの山を、誰もが知る地元の名所「Murray Mound」の形と名前、そして有名人(Judy Murray)に接続したことで、報道の見出しを独占した。そして重要なのは、この見せ方だと自社商品が「説教」ではなく「救済策」として自然に登場できることだ。問題の大きさを物理で突きつけたうえで、「うちの商品で減らせます」と差し出す。順番が効いている。
中小企業なら、こう使える
「うちは環境問題を扱う会社じゃない」——構造だけ抜けば、テーマは何でもいい。自社が扱う”目に見えない損失・無駄・機会損失”を、人が横に立てる実物の量塊にして見せる。
たとえば建設。「日本の現場では毎年これだけの手戻り・廃材が出ている」を、実物の廃材やダンボールの山にして展示会ブースやイベントに置く。「人手不足で失われている工事量」を、積み上げたヘルメットの数で見せる。たとえばB2B営業支援(ゲンバスター)。「御社が1年で取りこぼしている商談数」を、名刺やリストの束の”高さ”にして提案の場に持ち込む。エクセルの数字より、積み上がった現物の高さのほうが、はるかに刺さる。
共通するのは、数字を語らず、量塊にして横に立たせること。しかもその塊を、地元の名所や誰もが知る基準に重ねると、報道もSNSも動く。そして最後に、自社を「その山を減らす救済策」として差し出す。この順番を守れば、押し売りにならずに商品を主役にできる。
まとめ
Dr. Beckmannがやったのは、誰も想像できない数字を、誰でも一目でわかる山に変えたことだった。数字は流されるが、量塊は足を止める。扱うテーマが「目に見えない損失」であるほど、この型は効く。予算の大小ではなく、「何を物理化するか」の発想勝負だ。
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