新しいサービスを知ってもらいたいとき、私たちは新しい広告を作る。だが、自社が既に持っている「人が夢中になっているもの」に相乗りできれば、集客コストをかけずに熱量を借りられる。Amazonは、自社の人気ドラマの世界に自社の配達を割り込ませることで、地味な「配達」を魅力的に見せた。手持ちの資産どうしを掛け合わせる型を分解する。
何が起きたのか
2026年6月29日から9月13日にかけて、Amazonは社内クリエイティブチーム制作で、グローバルキャンペーン「It’s on Prime」の最新弾を米国・カナダで展開した。
使ったのは、自社Prime Videoの人気シリーズ『Reacher』と『The Boys』。そのドラマの劇中世界に、Primeの配達員を“乱入”させたのだ。アクションシーンの真っ只中で、配達員が必要な品(マッサージガンなど)をさっと届ける。TV、SNS、音声、デジタルで、ワールドカップや両シリーズの新シーズンに合わせて放映された。
なぜ効いたのか
普通なら「配達は速くて便利です」というスポットを新しく作る。だが配達の速さや便利さは、単体で見せても地味だ。スペックの説明は記憶に残らない。
Amazonがやったのは、自社が既に持っている別の人気資産(ドラマ)の中に、売りたいサービス(配達)を文脈破りで割り込ませることだった。視聴者はすでにそのドラマ世界に感情移入している。その熱量をそのまま借りたのだ。
没入している世界に配達員が現れる意外性が、笑いと話題を生む。しかも既存ファンの熱に相乗りするから、新しい集客をせずとも大量の接触が生まれた。単体では地味な「配達」が、愛されている文脈に載った瞬間、魅力に変わった。
中小企業なら、こう使える
「うちに人気ドラマはない」。だが「人が既に夢中になっている自社の資産」なら、どんな会社にもある。
看板商品、よく見られているSNS投稿、人が集まる現場やイベント。その熱の中に、新しく売りたいものを溶かし込めないかを考える。
一番売れている商品の紹介動画の中に、新サービスや採用の告知を“文脈破り”で差し込む。人が集まる現場実演の合間に、募集や別商品を自然に見せる。新しい接点をゼロから作る前に、客が既に熱中している自社の場に相乗りする。ゲンバスターの実演型営業とも地続きの発想だ。
まとめ
Amazonがやったのは、自社の人気に自社の別サービスを相乗りさせたことだった。地味な価値も、愛されている文脈に載せれば魅力に変わる。手持ちの資産どうしを掛け合わせる。新しく作る前に、まずここを探したい。
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